海外と日本でエンジニアの労働環境に違いは?ベルリンで1ヶ月経過働いて感じた印象

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こんにちは。ベルリンへ移住し現地のスタートアップで働き初めてから早1ヶ月が経過しました。

ソフトウェアエンジニアとして働いている方であれば一度は海外で働くことを考えたことがあるかもしれません。

エンジニアは昨今の状況から国内でも他の職種と比べると働き方の自由度が高い職業として認知されています。しかし、エンジニアといっても組織によって働き方は様々です。

その議論の一つに日本と海外での労働環境・働き方の違いが挙げられます。

日本と海外での労働環境について様々な記事がネット上に散見されますが、実際に現地で働き始めた上でそれらの情報に対して感じたことを赤裸々にお話ししていきます。

1. 筆者の経歴概要

本題に入る前に、私の簡単な経歴をご紹介します。

日本では新卒から働いていた会社で4年ほど勤めており、その後ドイツ・ベルリンの現地企業への就職を決めました。

もともとキャリアを開始してから3~5年の間に海外企業へ転職することは目標として定めていたので、ちょうど良いタイミングで転職することができました。

日本では主にバックエンドエンジニアとして働いていましたが、必要に応じてDevOps(SRE)・フロントエンドとプロジェクト毎に異なるロールを経験しWebサービスに関わる部分は幅広く経験していました。もちろん、色々と経験できるような仕事を任せてもらえるように意識的にアピールしていきました。

英語は学生時代にエンジニアになると決めてから学習を進めていたので、海外での生活に困らない程度の英語力は備えています。TOEICだと5年以上前に900以上のスコアを獲得しています。それ以外の試験は受験したことがないので参考になるスコアはありません。

2. 海外の労働環境として挙げられる代表例

ここ10年で海外で働く人の絶対数は増加したと思います。しかし、国内で働いているエンジニアが海外へ進出していくことはまだまだメジャーとは言えないでしょう。

もちろん国内でもエンジニアにとって魅力的な労働環境を提供している企業があるので、必ずしも海外に出ていくことが全てではありません。優秀な方の中でもあえて選択肢に挙げない方も多いと思います。

そのため「海外エンジニア 労働環境」で検索すると、実際の経験談よりも転職エージェントが作成した記事が多く見られます。全ての情報が間違っているとは言いません。しかし、多くの記事が「日本の劣悪な労働環境に対して、海外で働くことはこんなにメリットがあります!」という結論に終始しているように見受けられます。

事実だけを取り上げると間違ったことは言っていないのですが、もう少し実際の経験を元に「実際のところどうなの?本当にそうなの?」という部分を補完する意味で本記事を執筆することに決めました。

私が確認した記事の中で触れられていることとしては、以下のような点でした。

  • 給与が高い
  • 英語力よりも技術力
  • 定時退社がスタンダード
  • 休暇がとりやすい

3. 代表例で挙げられていることは正しい?

結論から言うと、上で触れられていることは全て正しいです。

ただし、「日本での文化・働き方・生活感をそのまま当てはめた上で成立しているものではない」という点だけ注意する必要があると思います。

それぞれ順番に詳しく見ていきましょう。

給与が高い

まずは給与についてです。

大前提として、それぞれの国で生活する上でのコストは全く違います。その上で給与に差が生まれることは当然です。

東京で働くことと、田舎で働くのでは給与体系が異なることと同じです。

生活コストだけでなくいろいろな項目で給与を評価する必要がありますが、簡単にまとめると以下のような項目になります。

  1. 家賃相場
  2. 生活必需品の物価相場
  3. 税金
  4. 福利厚生

日本のエンジニアの平均給与とアメリカ・サンフランシスコの平均給与を単純比較しても全く意味がありません。倍以上の金額をもらっても生活コストが倍以上かかり、税金も多く差し引かれたら手元に残るお金はわずかです。東京での生活と同水準、またはそれ以下のQOLになる可能性もあります。

私はベルリンで働き始めましたが、日本で受け取っていた給与よりも額面では100~200万円ほど多くもらっています。しかし、社会保障費・税金で差し引かれる金額が大きいこと、家賃の高騰、交通費の全額支給がないこと、外食費用が高いことなどを考慮すると東京での生活と大差はありません。

一部の領域での専門性を買われた場合は大幅な昇給は見込めますが、一般的なソフトウェアエンジニアにおいては日本で余程技術力に対して低い給与で働いていた場合を除いて、劇的に生活感が変わることはないと思います。

英語力よりも技術力

エンジニアは技術力が全て

私は半分は同意しますが、半分は反対の立場です。私の立場は「英語力も技術力も大事」です。

働く環境によりコミュニケーション量は異なるので、一概に私の意見が正しいとは言えませんが少なくとも私の経験ではどちらも重要です。

まず、海外にエンジニアとして採用されるためには100%技術力が大事です。その点を評価するために各社様々な採用プロセスを考案しています。詳細に関しては下記の記事を参考にしてください。

このため、英語だけできても技術力が伴わなければ採用されることは永久にありません。(少なくとも真っ当な条件での採用はない)

その点、「英語力よりも技術力」は正しいと思います。

しかし、「会社で働く」ということを想像してみてください。

エンジニアのメインの仕事はコードを書くことかもしれませんが、そのコードを書くためにも様々な議論が伴います。それだけでなく、何を作ったら良いのか確認するためにも綿密なコミュニケーションが必要です。自身の成果がどのようなものなのか、アピール・プレゼンする機会もあります。日常の挨拶、仕事だけでなく休憩中も他愛のない話で親交を深めていくでしょう。

全てを含めて「会社で働く」ということだと思います。

その点、IT業界に携わる限り英語は必須のスキルです。(ベルリンのIT企業は英語が公用語であることがスタンダード)そのスキルは絶対的な評価ではなく、自身の置かれた環境内で足かせにならない英語力と定義できると思います。

また英語が日常的に使われている環境の場合、多くの人が「英語でコミュニケーションを取れるのは当たり前」というマインドセットを持っているため、英語でコミュニケーションを取れないと「なぜここで働いてるの?」と思われることがほとんどです。

日本国内では英語が特別なスキルのように見られますが海外のIT企業では必須スキルです。むしろ母国語・英語に加え別の言語の3ヶ国語以上話す人も珍しくありません。

定時退社がスタンダード・休暇が取りやすい

海外ではワークライフバランスを重視して定時に退社することが普通です。

たしかに間違ってはいないのですが、それ以前に日本と働き方のスタイルが全く違うことに目を向ける必要があります。この文化を定着させるためにどのように働いているのかを考えなければいけません。

その違いは、責任の所在・自分の役割が明確で定時内に自身の仕事を終わらせる意識が高いことです。

IT企業であることからアジャイル開発がスタンダードで、どの期間(2週間)にどのチケット(タスク)が完了している必要があるのか、事前にチームですり合わせます。自分のアサインされた仕事を期限までに終わらせる。これはエンジニアだけでなく会社全体としての仕事の進め方として共通の認識を持てています。

その振られた仕事をどのように進めるのかは担当者次第です。このため、手順に沿った仕事の進め方に慣れている人は成果を出すのが難しいかもしれませんが、自分の技術力に自信のあるエンジニアであれば快適に過ごせると思います。

加えて、私が感じたことは議論から意思決定へのスピード感です。

ここは日本と大きく違うと日々感じていることですが、基本的に彼らは議論に慣れています。反対の意見であっても抵抗なく主張します。そしてその主張が正しければ皆納得し、正しくなければ棄却されます。これがスタンダードでそのプロセスにおいて感情が邪魔になることはありません

文化的に目上も目下もないので議論が極めて公平に進んでいき、議論からの意思決定が早いです。さらにその決定で進めた場合、何か失敗が起こったとしても誰も責めることはありません。もちろん決定プロセスへの再評価は伴いますが、大前提として失敗が許容されているのでトライ&エラーのサイクルが早く保てています。

定時退社と聞くと「海外のエンジニアはサボりがちで仕事量が少ない」と誤解される方もいるかもしれませんが、少なくとも私はそうは感じていません。

むしろサボるところはサボって集中する部分は最大限集中して成果をあげる、超効率的な働き方を実戦しているだけだと思います。

その結果、定時退社・休みたいときに休むことが実現できているのです。

※全ての環境が上記の働き方を実践できているとは言えません。人によって全然仕事をせずに切り上げてしまう人もいます。

4. おわりに

今回は巷で取り上げられている海外のエンジニア労働環境について、実際に現地で働くエンジニアとして感じた部分をお伝えしました。

ほとんどの点が事実だとは思いますが、それが表面的に捕らえられている気がしたのでより本質的な部分を伝えられるように執筆しました。

まだ1ヶ月ほどの経験ですが、充実した日々を過ごせています。毎日新しいことの発見の連続です。

私自身は特別技術力の高いエンジニアだとは思いませんし海外で働いていることも特別なことだと捕らえていませんが、現在の環境に到達するためにある程度の努力はしてきたつもりです。

もし海外に進出して様々なプロダクト・エンジニアと働きたいと考えている方にとって、少しでも参考になれば幸いです。