ドイツ企業年金(betriebliche Altersvorsorge)について
11月からいよいよベルリンのスタートアップで働くことになりました。
先日初めての給与を手にし、その税金の高さに驚きながらも新しい環境で楽しんでいます。
※あくまで本記事は私個人で理解している内容に基づき作成しています。正確な情報を求める方はドイツ語の情報源を確認してください。
1. ドイツの年金について
さて、日本でも20歳以上になると加入が義務付けられる「年金」ですが、システム自体はドイツが発祥のようです。
日本では一般的なサラリーマンの場合、「厚生年金」に加入します。これは「国民年金」という国民に義務付けられた年金に加え、保険料を上乗せして支払うことで老後の受給額を増やす仕組みです。保険料は雇用主(会社)と従業員が半々で負担します。
ドイツにも同じように、従業員が一律で額面の給与から支払う年金が存在します。
「RV/Rentenversicherung」と表記されるもので、2020年現在その税率は一律「9.3%」。本来は「18.6%」の負担なのですが、日本と同様に半分は雇用主(会社)が支払うため個人負担は「9.3%」です。
- 例)月給が3,000EURの場合、年金保険料は279EUR
- 例)月給が5,000EURの場合、年金保険料は465EUR
2020年現在、日本の厚生年金負担は合計「18.3%」、個人の負担は「9.15%」ですのでそこまで大きな差はありません。
2. ドイツの企業年金・betriebliche Altersvorsorgeとは
先ほどの「RV/Rentenversicherung」は英語でいう「statutory pension insurance (法定年金保険)」を指します。
しかし、この法定年金保険では老後に向けた資金計画として不安が残るのが実情です。そこで、従業員が企業を通して加入することができる企業年金の仕組みが導入されました。
ポイントとしては以下の通りです。
- 任意加入
- 企業の負担も任意
- 民間会社による資金運用
- 給与から天引き(全ての税金から控除)
- 最大276EUROまで
- 法定年金と異なり最低加入期間なし
- 63歳から受給可能(病気などの事情により62歳から)
- 一括受給または終生年金受給を選択可
ざっと一気にリスト化してもわかりにくいと思いますが、加入によるメリットはかなり大きいです。
メリット1:税控除が大きい
こちらが最大のメリットです。
通常は月額の給与に対して、所得税と社会保険料が差し引かれます。これらの金額は月額給与を元に一定率で計算されるため、月給が多いほど負担額は多くなります。
例えば、月額3,000ユーロの月給に対して総額30%の税金がかかるとすると900ユーロが差し引かれます。(簡略化するために架空の税率で計算)しかし、企業年金に200ユーロ積み立てておくと、残りの2800ユーロに対してのみ30%の税金がかかることになるので、所得税・社会保険料の負担は840ユーロで済むのです。
企業によっては積立額を負担してくれることもありますので、そういった場合はさらに積み立てを上乗せすることもできます。
以下のように考えると、よりメリットが強調されるでしょう。
- 企業年金に加入しない場合:月給3,000ユーロ。30%課税後の手取り金額2,100ユーロ。
- 企業年金に加入した場合:月給3,000ユーロ。積立後の2,800ユーロに対して30%課税。手取り金額1,960ユーロ。
(自己負担200ユーロ+会社負担20ユーロ=合計220ユーロの年金積み立て)
つまり、毎月の負担額140ユーロ(2,100ユーロ - 1,960ユーロ)で、年金に220ユーロ積み立てることができるのです。毎月の手取り金額は減りますが、その分民間会社によって積み立てた額が運用されていくので、運用の成果によっては平均年利数%の可能性もあります。単純な積み立てでもメリットが大きい上に、プロによる運用成果も受給額に反映されるので最も手軽な資産運用と呼べるでしょう。
メリット2:最低加入期間なし
法定年金とは異なり、最低の加入支払い期間はないようです。そのため短期間の加入期間であっても63歳以降、その積立分+運用成果を受給することができます。
考え方によっては民間会社による運用はリスクと捉える方もいらっしゃると思うので、その点は要検討してください。
メリット3:煩雑な手続きなし
基本的には雇用主(企業)を通して加入するものですので、私たちで手続きをする必要はありません。
ドイツに住んでいる方であれば多少経験されていると思いますが、煩雑な事務手続きがないだけでメリットと感じることができます。
会社によって対応する民間会社が異なるので、転職した場合は企業年金の変更が必要になりますが、こちらも基本的には所属企業・保険会社間でのやりとりになりますので、従業員側で対応することはほとんどないでしょう。
デメリット1:解約する場合
人生いろいろなことが起こります。いつまとまった現金が必要になるかもわかりません。
そうした際にこの企業年金の解約に踏み切る場合もあるでしょう。
企業年金を解約する場合、積立時に控除された分の支払いをしなければいけません。当たり前のことですが、本来支払わなければいけなかった税金を支払う必要があります。また、企業に負担してもらった金額も受け取ることができません。
つまり、積み立てられた金額に対して戻ってくる金額がかなり少なくなるので、解約することは最終手段としておいた方が良いと思います。
積立額はいつでも変更可能なので、家計の状況を考慮して毎月の負担額を決めていくと良いでしょう。
デメリット2:ドイツの銀行口座が必要
ドイツに永住される方であれば何の問題もないでしょう。
しかし、日本に帰国される方や別の国へ移住する方はこの点に注意が必要です。
2020年となった今ではそれほど厄介な問題ではありませんが、老後もドイツの銀行口座を維持しておかなければいけないのは少々手間がかかるでしょう。
銀行によっては条件次第で口座を閉じられることもありますので、その点も頭に入れておきましょう。
3. おわりに
いかがでしたでしょうか?
今回はドイツの企業年金の制度について簡単にご紹介しました。
情報の精度に関しては可能な限り確認はしておりますが、不備がないとは言えません。その点はご了承ください。
※本記事の内容は、実際に企業年金の説明を保険会社から受けた際の情報を元に作成しています。