楽天・新卒の年収は?元社員が語る待遇やキャリアについて
ここ数年新卒人気企業ランキングに上位として名を連ねることの多くなってきた「楽天」。日本でも有数のITメガベンチャーとして知られています。
もともと楽天市場から事業を開始し、2021年現在ではECにとどまらず5つの事業領域でカンパニーを分割し(コマース・アド&マーケティング・コミュニケーション・インベストメント・フィンテック)、あらゆる領域で事業を展開しています。
そんな楽天ですが、就職を考えている学生にとっては事業領域よりも以下の2点で、より注目を集めている印象です。
- 英語公用語
- 高額な月給
英語公用語に関しては社内の実態についてご紹介している記事を別途用意していますので、そちらをご覧ください。
今回は2点目の「高額な月給」に絡めて、実際のところ新卒として受け取れる給与はどのくらいなのか、元社員としての経験をもとにお話ししていきます。
1. 楽天の平均勤続年数・年収
まずは過去の有価証券報告書より、楽天グループ株式会社(Rakuten Group, Inc. )の平均年齢・勤続年数・平均年間給与を見ていきましょう。
蛇足ですが、2021年4月1日付けで「楽天株式会社」から「楽天グループ会社」へと社名が変更されました。
今回は7年前まで遡り、2014年〜2020年の有価証券報告書から以下の表をまとめました。
年 | 平均年齢(歳) | 平均勤続年数(年) | 平均年間給与(万円) |
---|---|---|---|
2020 | 34.2 | 4.5 | 745 |
2019 | 34.4 | 4.6 | 756 |
2018 | 34.4 | 4.7 | 720 |
2017 | 34.0 | 4.9 | 708 |
2016 | 33.7 | 4.6 | 689 |
2015 | 33.3 | 4.5 | 672 |
2014 | 32.8 | 4.3 | 661 |
平均年齢は30代中盤と、いわゆる日本の大企業と比較すると若い水準にあることがわかりますが、IT企業・業界水準としては平均的な数値だと言えます。
勤続年数は4年半ほどです。
平均年収はこの7年で600万円中盤から700万円中盤へと一気に伸びてきていることがわかります。
実際に働いていた身としては、年齢・勤続年数・年収ともに平均値としてこのくらいに収まることは肌感覚的にも納得です。
しかし、これらはあくまで平均値であり、実際は後述の格付けを毎回の評価でどれだけ早く上げられるかがポイントになります。
問題なくスムーズに昇進いていくことができれば、30歳時点で800万円くらいに到達することもできるでしょう。
2. 楽天の給与評価制度
楽天は評価制度についても詳しくコーポレートサイトに記載があります。
評価制度は全社で統一されたフォーマットが採用されており、半年に1度、社員の能力(コンピテンシー)と成果(パフォーマンス)が評価されます。
コンピテンシー評価によって、格付け(B、BB、 BBB、A、AA、AAA)が与えられ、この格付けによって月額給与が決定します。
コンピテンシーは以下の11項目から構成され、それぞれに対して上司とゴールを設けていきます。
半年に1度そのゴールに対する達成度やコンピテンシーの向上を評価することで、より高い格付けへと昇進していくことができます。
昇進要件の詳細は明かせませんが、1度の評価で一気にランクアップ(BBからBBBへ)することはありません。自身の入社時の契約によりますが、最低でも数回の評価期間を経て次のランクへアップするといったイメージです。
このランクアップの期間が実力や環境によって左右されるので、長く勤めているからと言って確実に次のランクに昇進できるというわけではありません。
また、賞与は自身の格付けに対して、仕事で上げた成果がどの程度の難易度・インパクトなのかが評価されます。
さらに、自身の所属する事業の業績によって割り当てられる賞与に幅があるので、自身の所属事業によって多少賞与の額が変動します。
ストックオプションに関してはすぐに権利を行使できるわけではないので、収入として期待しておくよりも、ないものとして捉えていた方が良いかもしれません。
3. 楽天の福利厚生
福利厚生に関しても詳しく記載があります。(新卒採用・キャリア採用)
一つ一つ挙げていくとキリがないので、元社員としての感想をお話ししていきます。
無料の社内カフェテリア
まずは良い点から。
なんと言っても一番ダイレクトにメリットを実感していたのは、無料の社内カフェテリアです。楽天の福利厚生としても有名だと思います。
特徴は超豊富なメニュー。
メインの魚・肉類・グリル・丼・うどん・そば・ラーメンから始まり(6~8種類)、サイドとしてサラダや日替わりの惣菜、お米も白米・玄米が選べたりと実に品揃え豊富でした。
また本社ビルには2つのカフェテリアがあり、それぞれメニューも異なります。
無料だったことに加え、11:00~14:00の間、自身の気分によって好きな時間に行って食べられることが何より大きな魅力でした。
本社ビルのある二子玉川でランチとなると1000円ほどはかかってしまいますし、混雑も予想されます。お金と時間の両面でこの仕組みは有難いものでした。
一点注意しなければいけないのは、ディナーの開始時間が19時からと少し遅いことで、あくまで残業する社員に向けたものになっています。
一人暮らしの若い社員はよくこの時間まで残って食事を済ませてから帰る人も多かった印象です。
出産・育児・休暇に関する柔軟さ
私自身が直接恩恵を受けた部分ではありませんが、若手社員だった私から見ても「子育て世代」に対して、非常に働きやすい環境だと感じました。
産休・育児休暇からの復職率も非常に高いですし、時短勤務・時差出勤といった点でも柔軟な働き方をしている方が多かった印象です。
男性でも育児休暇をとることに対して全く違和感がなかったので、その点は素晴らしかったです。
有給休暇も自身で仕事の調整・コントロールさえしっかりしていれば、長期休暇も問題なく取得できます。私自身も毎年海外旅行に行っていました。
その他
上記以外にも、本社ビルの施設は他のIT企業と比べても頭一つ抜けているように感じます。
従業員価格のカフェ(喫茶)やコンビニ、病院・薬局、ヘアサロン、フィットネスジム、高級レストラン、ランドリーサービス、マッサージなど枚挙にいとまがありません。健康診断も社内ビルで受診していました。
施設以外にも所有・スポンサーしているスポーツクラブ関連の試合観戦や納会など、様々なイベントも良かったです。
持株会や楽天市場で取り扱っている商品の社員割引など金銭的な恩恵も多少はありました。
イマイチなところ
やはり家賃補助がないところが一番大きな不満点でしょうか。
本社ビルが二子玉川ですので、通勤を考えると社員は二子玉川または田園都市線沿線、多摩川を超えて川崎市周辺といったところに住むことが多いです。
やはり人気のエリアで家賃が高いので、少しでも家賃補助が出ていれば助かったなという印象です。
それ以外にも、エンジニアとして日々の自己研鑽のサポートが少なく感じました。
カンファレンスは国内・海外含めてサポートが出ますが、技術本やオンラインコースなどの支援が少なかったので、その辺りも充実してくれるとより手厚く感じられたと思います。
とはいえ、業務内容を除くと、人間関係を含めて働き方に関しては文句の付けようがなく、本当に快適な環境が整っていたと感じます。
4. 新卒時の給与・年収
さて、ここからが皆さんの気になっていた本題です。
新卒1年目の給与についてお話ししていきます。
まずは募集要項の記載を確認しましょう。(ビジネス総合職・エンジニア職)
総合職
総合職の場合、学部卒は30万円、院卒は31万円が月給となっていますが、どちらも40時間のみなし残業が含まれています。(基本給:227,849円+固定残業代:72,151円)
40時間以内の残業は残業手当が支給されません。40時間を超えた分の残業に対してから支払われます。
つまり基本給だけ見た場合、他の企業と大差がありません。残業時間を少なくすることで時間単価を高くすることができれば、高い月給と呼ぶことができるでしょう。
総合職の場合、格付けは学部卒、院卒でそれぞれB、BBから始まることが多いようです。給与の差はこの格付けの差であると考えて良いでしょう。
また、賞与は学部卒の場合、12月の1回のみの支給で10万円だそうです。
総合職の場合は、事業によって賞与とは別に、インセンティブの成果報酬が与えられる場合があります。この金額によっても収入は大きく変わってきます。
エンジニア職
一方、エンジニアの場合は入社時からもう少し幅広く給与が設定されます。
最終学歴と経験がバラバラであることが要因かもしれません。
実際に私も同期の金額を聞いたことがありますが、、私より1~2万円月額給与が高い人もいました。学部卒・修士卒の場合は31~33万円のレンジに収まっていることが多いはずです。
博士などの学位がある場合は、さらに数万円上乗せされることもあるようでしたが、基本的にはBBの格付けから始まっていることがほとんどでした。
また、賞与に関してはBBの格付けであれば年に2回の支給です。金額はおよそ1.5ヶ月分。評価によって多少上下することは前述のとおりです。
まとめ・新卒の年収
それでは総合職とエンジニア職の1年目の年収をまとめてみましょう。
- 総合職:370万円〜430万円
- エンジニア職:470万円〜530万円
実際にエンジニア職である私の1年目の年収も470万円ほどでした。
5. 年収の伸び
最後に年収の伸び具合を見ていきましょう。
年収の伸び具合は大雑把に表すと、「年功序列+実力主義」といえます。
年功序列といえるのは、悪い評価を取らなければ一定の割合で毎回昇給していくためです。格付けに幅広い給与レンジが割り当てられており、格付けの上限に達するまでは昇給していきます。
この仕組みにより同じ格付けの社員であったとしても、長く勤めていたほうが同格付けの上限に近づいていくため、より給与が高くなっていきます。
極端な話ですが、昇進したてのAという格付けの社員よりも上限値に達したBBBの社員の方が良い給与をもらっています。
一方、実力主義である点は一つ上の格付けに昇進するために、日頃の成果と能力(コンピテンシー)の発揮が不可欠だからです。
昇進の速度は本当に人によってバラバラです。私の同期ではBBからBBBに昇進するのに最短で1年、最長で3年だったと記憶しています。
もちろんスタート時点でBBBに近い位置から開始している社員もいるので、一概に比較はできません。しかし、それでも部署や職種、自身の成果によっては全く次の格付けに進めないケースもあるようですので、ある程度の実力主義は存在していると言えるでしょう。
それでは、最後に私の新卒から退職までの年収の推移をざっくりみていきます。新卒で入る学生にとっては年収の推移も気になるところだと思います。
中途入社される方にとっても、この年収推移は一つのモデルとして参考になるでしょう。中途の方は経歴にもよりますが、BBやBBBの格付けで入社することが大半です。
- 1年目:400万円台後半
- 2年目:500万円台中盤
- 3年目:600万円台前半
- 4年目:600万円台後半
- 5年目:700万円台前半
BBの格付けの場合、良くても500万円台中盤。BBBになると600万円に届き、年次を重ねていくと700万円や800万円に届くかといったところです。
3~4年勤めると、入社直後に付与されたストックオプションを行使できるようになるので、それも含めるとざっくりこのくらいになるでしょう。